藤田嗣治氏の最後の家を訪問しました。
昨日、以前から行きたいと思っていた藤田嗣治氏の最後の住まいを見学してきました。
Maison Atelier FOUJITA
メゾン アトリエ フジタ
ここはパリから車で30から40分の村にあります。
公共の電車とバスで行かれるのですが、バスの本数が少なそうだし、わかりにくそうで、なかなか足が向きませんでしたが、友達が車で連れて行ってくれることになり、やっと念願がかないました。
藤田嗣治氏がフランスに帰化した人だと3年前に知り、以来彼の人生に興味を持っています。
藤田嗣治氏と奥様の君代夫人が、藤田氏のなくなるまでの7年間を過ごした家だそうです。
廃墟だった二軒の家の壁を外して一つの家に改装し、藤田ワールドに染め上げていました。
住居は日本でいう一階にキッチンとダイニングがあり、ここはもともと倉庫だったため、天上が低くなっています。
窓から広い庭が見え、自然の中にいる事を実感します。
お庭というよりは林の中
炊飯器やごますり機があり、日本食も召し上がっていたようです。
ガイド付きの無料見学には、フランス人の家族づれなとが参加していて、ごますり機の事から
[ 日本人はそんなにゴマを食べるのですか?]と不思議がっていました。
キッチンからはお二人の暮らしが垣間見れる気がして、あれこれ想像してしまいます。
日本でいう二階はリビングと寝室になっていて、リビングには美空ひばりのレコードがありました。
ベッドルームの左側にはマリー ローランサンの白黒の絵が飾ってあります。
服のかかっている下に靴が二足置かれていましたが、どちらもバックスキンで、きちんとシューズキーパーがしてありました。
私は今まで一度もシューズキーパーがしてある靴を実家でも、人の家でも見た事がなかったので、育ちの良さからくるものなのか、彼が几帳面な性格なのか、どちらにせよ新たな一面を見た気がしました。
三階はアトリエで、藤田氏の仕事道具である筆や絵の具がズラリと並んでいます。
アトリエに入って、[ わっ!]と圧倒されました。
南仏でルノアールのアトリエを見た事がありますが、もっと優雅な感じがしました。
しかし藤田氏のアトリエは、気迫というか強いエネルギーに満ちている感じがしました。
壁にはランスで最後に完成させた礼拝堂のフレスコ画の習作か描かれています。
藤田氏は器用になんでも作ってしまい、アーティストの住まいって素敵だなぁと思いました。
洋裁も好きだったそうで、アトリエには黒い足踏みミシンがありました。
見学が終わって出る出口の扉は、スペイン旅行に行った時に気に入って購入し、この家のサイズに切って付けたそうです。
私にはないスケールで生きていた人なのだと、こういうエピソードからもわかります。
IKEAの家具もいいけれど、オリジナリティある空間で、気に入った物に囲まれて生活してみたくなりました。
私はパリ住まいで、こういう村には住んだ事がないので分からないのですが、もともと都会で暮らしていた人が自然の中で暮らすのはどんな気分なのでしょうか?
おそらくこの村で日本人は彼らだけだったと思います。
遠出する時はいつも同じ人に頼んで、車で移動していたそうなので、不便はなさそうです。
この家に展示してある物は、ほとんど藤田氏の物です。君代夫人の私物らしき物は見当たりません。
君代夫人があえて藤田氏の物だけの展示を希望したのかもしれません。
夫人は藤田氏の亡くなった1968年からご自身の亡くなる2009年まで藤田氏の作品を管理していました。
この家を訪れてから、君代夫人ってどんな方だったのかと興味を持ち始めてしまいました。
どんな気持ちでこのフランスの田舎暮らしをしていたのでしょうか。
もし自分に藤田氏のような夫がいたとして、外国の田舎の廃墟を買って改装して住もうと提案されたらどうしましょう。
もっと君代夫人について知りたくなる、素敵なお宅拝見でした。
日本語のパンフレットより
見学には日本語のオーディオガイドを貸してもらえます。