jeanne-lully’s blog

ちょっと変わった元日本人がパリで思う事

ミニマリストが生きやすいフランス

 私自身もともと物が少ない方だと思うのですが、今年に入ってからはミニマリズム思想に影響を受けて断捨離にフォーカスした日々を送っています。

 

 フランスにミニマリズムという思想があるかはわかりませんが、ミニマリストだと本人は意識していなくても、周りからはミニマリストに見える人達がいます。

 

いつも同じような服を着ている。

 

好きな仕事だけをして、お金があまり稼げなくても楽しそう。

 

お金がなくても旅行に行く。

(楽しむ事に自己投資をする)

 

 こんな感じに、外であった時の印象がミニマリストなのです。

 

 実際に家の中にはお気に入りの物が溢れているかもしれないし、スッキリしているかもしれません。

 

 物に執着してどんどん買ってしまうと言うよりは、片付けられずに捨てないので物が多い事はあるかもしれません。

 

 ただ生き方はミニマリストの要素を含んでいるのではないでしょうか。

 

これはフランス社会がミニマリストを育てる環境を作っているからだと思うのです。

 


フランスは入社する時すでに、自分の階級がほぼ決まってしまい、日本社会のように会社が人を育てて出世させるような仕組みではありません。

 

高学歴のエリートは、初めから管理職で採用されます。

 

一般人は給料が一生大きく変わらないのだから、収入の範囲内で年間に5週間もある休みをどうやって過ごすか、これが考えごとの半分は占めていそうな気がします。

 

 最低賃金が国で決められています。

この金額が給料の職種ってけっこうあるのです。

 

 この給料ではパリで6階エレベーターなしの小さな屋根裏部屋に住んでも、バカンスで豪遊したり、ブランド物を頻繁に買うのは難しいです。

 

星付きレストランなんて行く機会があるか分からないし、オペラ歌手を目指しているフランス人大学生でオペラ座で生オペラを見た事がある人はあまりいませんでした。

 

フランス人大学生は日常的にあまりアルバイトをしません。

スタージュといって、自分の進路に関係ある職場で見習い仕事をして人脈やコネを作る事はありますし、自分の特技を生かして生徒を持つ事はあります。

 

冬は雲り空で快晴にならない地域が多いフランス。

 

長いバカンス期間に少しでも太陽を近くに感じていたいのです。

 

 とにかく日常を離れ、何も特別な事をしないで、いつもと変わらぬ食事をしても、それでも楽しめるのがフランス人。

 

 現地で大量にお土産を買うよりは、帰宅してから食べる為の物や、気に入った民芸品を自分のために買ったりしています。

 

 旅行中に着ている服は普段着のままで、移民系の人はオシャレをしているし、よく買い物もしています。

 

持て余す時間を自分の好きに過ごす贅沢。

 

とはいえ、夏に3週間、冬に2週間のバカンスをもらったとして、時間を潰すには交通費や食費、観光、娯楽にお金はかかります。

 

昇給なし、ボーナスなしなんてよくある事。

 

毎月の生活だけで給料ギリギリだとしたら、必要最低限の物以外を買うのは後回しになるでしょう。

 

 私の周りに高級なアパートやお屋敷に住んでる人はいません。

 

 私の行動範囲には、日本にいた時のように、エルメスやシャネルなどの高級ブランド品をいくつも身につけている人はあまり見かけません。

 

ただしアディダスなどのスポーツ系ブランドは若い学生でも身につけています。

これは富の象徴としてではなく、スポーツマン人生への憧れ、生き方の方向性を示すものとして人気があるのだと思います。

 

エリアによっては、野菜を買っているマダムがオシャレに決めてブランドバッグを持っている事はあります。

 

フランスでブランド品を持つ日常を過ごしている人達は、セキュリティのしっかりした家にすみ、車で移動することでしょう。

 

一般人でもスリや空き巣に狙われるのだから、裕福に見える人は一般人以上の注意が必要です。

 

それにオシャレなヒールで地下鉄の通路や石畳の道を歩くのは、靴が傷むリスクが高すぎるます。

 

こういう方達がミニマリズムに興味を持ってしまうと経済に大打撃を与えてしまうので、引き続きファッション誌の中のような優雅な生活を送っていただき、世界の人達に夢を与え、最新のファッションに身を包み、しっかり消費社会のリーダーとなって経済を回す役を引き受けていただけたら経済バランスが取れます。

 

フランスではセキュリティの面からみても、収入がかなりある場合以外は、高級品を持つ必要が感じられません。

 

それに多民族で成り立っている都会では、服装に流行を取り入れなくても大丈夫。

 

季節感、時代感などおかまいなしなバラバラな装いをしていて、それを個性と一括りに形容しています。

 

こんな時代遅れの服で恥ずかしいと思う必要なく、古着屋さんがパリのあちこちで大盛況。

 

暖かいシーズンになると、一般市民の蚤の市(フリーマーケット)があちこちにで開催され、不要になった服や物を売り、古いものが市場を循環しています。

 

世界中からやって来る旅行者は、ジーンズ、Tシャツにサンダルのような超カジュアルな服装で、本来ならもう少し違う服装の方がいいとは思うシックな場所でも、気にする様子もなく堂々と闊歩しています。

 

 またフランスの豊かな文化を求めて留学生が押し寄せています。

 

 彼らの中に経済的に恵まれている人がどのくらいいるのでしょうか。

 

親の援助で勉強に集中できる裕福な人はもちろんいます。

 

そうではない人だって当然いて、母国にいる時よりも節約しなければなりません。

 

そんな暮らしの中では、最低限の生活費と海外ならではの経験にお金を使い、他の事にかけるお金はよく考えて使わざるを得ないでしょう。

 

 こういったフランス滞在者事情が、フランスファッションをカジュアルにし、人のことなど気にしない風潮を作っています。

 

また100円均一の店はないし、ドラックストアーでお菓子や日用品の安売りをしていることもなく、日曜日に閉店の商店もいまだに沢山あります。

 

店内に購買力を高めるための音楽はなく、たまに店内放送が流れるくらい。

 

安いから衝動買いしてしまうのは年に2回のセール期間。

 

 買い物をする動機が[ 必要だから]であり、日曜日に買い物しに家族で出かける休日の過ごし方をするのはクリスマス前くらいでしょうか。

 

 ではフランス人はお金をかけずにどうやって楽しんでいるのでしょうか。

 

 まず話が大好きなフランス人、休日や仕事帰りなどカフェでビールか何かを片手に、長時間お喋りしています。

 

一杯しか注文しなくても、わりと長居できるカフェはフランス人のオアシスです。

 

 暖かい日は大きな公園で本を読んだり、ピクニックをしたり、気持ちよく過ごすことができます。

 

 歩くのが好きな人が多く、パリなら川沿いや歴史地区を散策したり、郊外なら自然の中を歩いています。

 

 夏などは野外映画やコンサートなど無料のイベントがあります。

 

いつでも無料ではいれる美術館があるし、9月の世界遺産公開日はエリゼ宮のような日頃は一般公開していない場所がたくさん無料公開されます。

 

お金がなくても自然と文化に触れる機会に恵まれてると思います。

 

 他にはボランティアに参加したり、ダンスや歌を習ったり、趣味を充実させて人との交流を深めているようです。

 

 街のスーパーやパン屋さん、学校の掲示板などに、[ギターを教えます]とか[英語を教えます]などの個人広告が貼ってあり、気に入った広告を見つけたら本格的にお金をかけなくても気軽に知識を深められるのです。

 

 フランスにいて自由な時間が増えると、休日はマッサージを受けて疲れを取ったり、気分転換にネイルサロンに行ったり衝動買いをしてリフレッシュをはかり、仕事に戻っていく準備をする為の時間ではないことに気づかされます。

 

 唯一、自分が持っている[時間]という財産をもとに、自分はどういう生き方をしたいのか、どうしたら充実した人生が送れるのか、お金や物を持つ事では解決出来ない質問と向き合う事になるのです。

 

 消費以外の行動で人生を豊かにする事を考えているのは、ミニマリズムと共通しているように思います。

 

ムダなものがない、厳選したお気に入りの物に囲まれた空間にいると、今を意識して[ 今を生きる ]事ができるようになるのかもしれません。

 

フランスは名のある芸術家の生涯をみてもわかるように、昔からお金がなくても好きな事をつづけるミニマリストが自然発生しやすい土壌だと言えるでしょう。