もしかして定年後の生活ってこんな感じ? 外出できなくて想像する老後
フランスはすでに外出制限が出て一か月が過ぎ、最低でもまだあとひと月この状態は続きます。
生活がある程度保証されているので、金銭的な心配はそんなになく、ありがたく思います。
それにほとんど部屋から出ないので、ウイルス感染の心配もほとんどしていないのです。
ただこの生活を送っていると、自分が定年したらこんな生活になるのかなぁと、定年予行練習に感じるのです。
自分の年齢的にも遠い未来の事ではないので、リアルに考えてしまう。
例えば、このままパリに住むのか、郊外で家賃が安く自然の豊かな場所に住むのか。
健康に自信があれば病院通いの心配はないので、大都市まで電車で簡単にアクセスできる田舎も悪くはない。
ただもとが日本人の私が、生粋のフランス人社会に一人で入って上手く馴染むには、自分の語学力と社交性にかかっていると思うのです。
日本人で郊外や地方に住む人もいますが、ほとんどはフランス人配偶者の事情でそこに住んでいるのではないでしょうか。
配偶者の実家の近く、生まれた町、または職場の近くなどで、日本人がフランスに来て一人で住む物件を探し始める場所ではありません。
フランス人の友達が多くなると、郊外に住む人の家を訪ねたり、バカンスで田舎に同行したりして、大都市以外の生活を覗くチャンスはあるかもしれません。
郊外と言えば、 画家の藤田嗣治さんの最後に住んだ家がパリの郊外にあり、昨年行ってきました。
電車とバスを乗り継ぎ、バスを降りると小さなロータリーになっています。
観光地化されていない村のど真ん中で、そこから見えたのは小さなスーパー、カフェとレストランが2~3軒?と市役所。
そこから直ぐの所に藤田氏の小さな2階建ての家はあります。
目の前は林で、こんな外出出来ない時には庭を散歩できて羨ましい。
ただ藤田氏は最後の奥様である君代夫人と一緒に生活していました。
この2人暮らしというのがポイントです。
もしここに外国人女性が一人で住むとなると、セキュリティの面が心配です。
田舎に住む日本人女性宅に、泥棒が度々入るという話も聞きます。
産まれた時から住んでいれば別ですが、田舎で外国人は目立ちます。
物が盗まれるのは不快ですが、トイレに起きた時に泥棒と鉢合わせしてしまったらと思うと、恐怖です。
食べる物はフランスのスーパーに売っている物で賄わなくてはならず、日本食材や日本語の本はパリまで買いに行くか配達を頼むか。
今のパリが同じ状況なので、不便さは簡単に想像できてしまいます。
あまり料理をしない私には、そんなにバリエーションのない単調な食生活になりそうです。
自然が好きとか、自然の中でやりたい事があるならばいいのですが、都会にしか住んだ事のない私には、街歩きが出来る所の方がよさそうです。
他に考えた老後については、毎日どうやって充実感を得るかということ。
やらなくてはいけない事がほとんどなくなるので、達成感は得られない。
毎日のルーティーンワークだけで、はたして充実感は得られるのでしょうか?
いつもより細かく掃除をした
目当ての特売品を手に入れた
初めての料理に挑戦した
遠くまで歩いた
本を読み終えた
etc......
これだと感動は小さいかも知れないです。
やっぱり、
友達と出かけた
旅行に行った
美味しいレストランを見つけた
ウインドーショッピングを楽しんだ
美術館に行った
習い事に行った
などの外に出る活動は、単調な生活のスパイスとなり刺激を与えてくれます。
フランスの語学学校に通っていた頃、
[ 家にいないで外に何かを見つけに出かけなさい!]
と、週末近くになると先生は生徒に言っていました。
それがフランス的教育なのかは分かりませんが、日本でも一般的には家にいるよりも外に出かけるのを良しとする風潮があるのではないでしょうか?
皆んなそれを肌で感じて生きてきたのです。
だから外に出られない今、家の中で感じる微々たる充実感では満足できず、どうしたらいいのか分からなくなっている人はたくさんいると思います。
それで老後の話にもどると、家の外で受ける刺激もあった方が良いのは言うまでもありません。
この一生に一度あるかないかの外出出来ない時を過ごした事によって、外に出て好きな所を好きなだけ散歩できる事がどんなに幸せな事なのか、公園やセーヌ川の辺りでボーっと座って過ごす事がどんなに心地よかったか、人と会って話す事がストレス発散になっていたし刺激にもなっていたのだと、こんな当たり前の事がありがたく感じています。
そう思うと収入が大きく減る老後でも、今の気持ちを忘れなければ、意外と楽しく毎日を過ごせるのかもしれないと、少し安心できました。
少なくとも、この外出制限期間よりは幸せになると信じています。